2009.6.8
5月1日から公募コンペの募集期間が始まっています。7月31日で締め切りです。
コンペは、僕らにとってもまだ知られていない新しい表現と出会える貴重な機会です。これまでも審査員をすると、自分自身が試されるような経験になり、とても学ぶものが多いので楽しみにしています。
映像と関わる表現や活動ならなんでもオーケーという条件で、おそらくとらえどころがないと思っている人が多いのではないかと思いますが、思い込みや前提にとらわれず、どんどん応募してほしいです。ただ、公募コンペの重要は、審査員の視点がどうやって応募作の評価に注がれるかという点にあることは間違いないので、簡単にその審査について説明をしたいと思います。
まず、審査は2段階に分かれています。これは、単純な絞込みのプロセスではなく、まったく別の役割をもつプロセスです。1次審査では、日本で従来の映画やアートからはみだす新しい活動をしている現場のアーティストがこれからの新しい映像表現について議論をしてセレクションをします。2次審査では、実験的な映画の製作、監督や配給、キュレーション、アートディレクションなどを担う影響力のある人たちに参加してもらいます。
宇川直宏さんは、おそらくメディアにも数多く取り上げられる人気アーティストして、VJ、グラフィックデザイナーとしての活動をもっともよく知られている人でしょう。独特のテイストは、ほかのクリエーターの追随を許さないばかりでなく、音楽や現代美術の領域でも注目されるばかりか、テレビからネットまでありとあらゆる映像文化を幅広く見続けている貴重な人材です。 千房けん輔さんは、メディアアートのユニット、エキソニモの活動がよく知られている人です。遊び感覚、サブカル感覚溢れるインターフェイスをデザインしながら、ウェブやゲーム的な操作によって身体性が顕在化される作品を作り続けています。それと、このふたりに、ドキュメンタリー作家やメディアアクティヴィストとして知られる土屋豊さんが加わります。映像表現がどうやって社会と関わっているか、ドキュメンタリーという分野は長い歴史を持つわけですが、現在のメディア状況のなかでそれが再考されていくうえに重要な作品制作や発言をおこなっている人です。
そして、2次審査。渋谷にあるアップリンクファクトリーは、映画のみならず様々な実験的な表現をおこなう場として東京でも数少ない貴重なスペースですが、そこを主宰する浅井隆さんはつねに鋭い眼光で次の時代の表現をみつけだしています。もちろんただの目利きではなく、インディペンダントな活動を実践していくうえで不可欠なビジネスとしての展望にも嗅覚を持っている人です。
そして、四方幸子さんは私もICC時代に一緒に仕事をした人ですが、国際的なメディアアートの動向をキャノンアートラボ時代から熟知し、あちこちを飛び回っているキュレーターです。そうした活動のいっぽうで、若い世代のアーティストにもつねに関心を持ち続け、活動を後押しする仕事も高い評価をされています。
山村浩二さんはアニメーション作家として、現在もっとも世界的な活躍をしている人で、代表作の「頭山」は、アヌシー、ザグレブ、広島といった重要なアニメーション映画祭でグランプリを獲得しています。またそればかりではなく、東京藝術大学大学院で教鞭をとりながら、世界各地のフェスティバルにもでかけて、若い世代の作家たちがつくりだす作品についてもとてもよく見ている方でもあります。
諏訪敦彦さんは、映画監督として、とくに私は「M/OTHER」という作品をみて、なにか決定的に新しい映画のありかたを目撃した経験をしたわけですが、今年もカンヌ映画祭監督批評週間で新作を発表し、実験的な試みを続けている人です。また、東京造形大学の学長として、幅広い視野で芸術全般の新しい動向に触れている貴重な人でもあります。
海外審査員の一人は、欧寧(Ou Ning)。「三元里」という新しい感覚に溢れたドキュメンタリー作品で知られているアーティストですが、数々の映画祭や美術展に企画や審査の仕事でかかわり、映画大国でもあり新しいアートの求心地でもある中国での最重要人物のひとりです。
そして、もうひとりは、イギリスのリヴァプールにあるFACT (Foundation for Arts and Creative Technology)のディレクターであるMike Stubbsです。ここは3スクリーンの映画館を持ち、かつギャラリーやアーティストが制作をするスタジオなどを持つ現場感のある新しいタイプの施設です。前のブログ記事でも触れた新しいフェスティバルを開始するので、今後提携するプログラムをつくっていきたいと思っているところでもあります。
コンペの受賞作がヨコハマ国際映像祭だけではなく、こうしたネットワークのなかで発表の機会を得ていくことも大いに期待したいと思っています。
ぜひ、応募を待っています。また、皆さんの周りで可能性のありそうな方がいれば声をかけてみてください。ウェブサイトの応募要項は転載大歓迎です!
(住友)