CREAMコンペティションには世界42カ国から992件の応募があり、映画、アニメーション、ドキュメンタリー、実験映画、映像パフォーマンス、インスタレーション、オンライン作品、写真、など多種多様な作品がエントリーされました。プロアマ、年齢、性別問わず世界中から応募された作品には、現在の映像文化の裾野の広さを感じさせる、刺激的で、ユニークなアプローチのものが多数ありました。

一次審査では、3名の審査員による審議の上、事前審査通過142作品から41作品を選考いたしました。最終審査では、一次審査を通過した全41作品をスクリーニングし、長時間に渡り議論が交わされた結果、授賞作品は下記の通りに決定いたしました。

結果発表

最終審査員


浅井 隆(アップリンク社長、プロデューサー、webDICE編集長)
欧寧[オウ・ニン](映像作家、アートディレクター、評論家)
四方幸子(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]特別学芸員、東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授)
Mike Stubbs[マイク・スタッブス](アーティスト、FACT[Foundation for Art and Creative Technology]ディレクター)
諏訪敦彦 審査委員長(映画監督、東京造形大学学長)
山村浩二(アニメーション作家、国際アニメーションフィルム協会日本支部理事、東京藝術大学教授)

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CREAM賞

VOICE-PORTRAIT ~self-introduction~

受賞作家

松島俊介

(展示作品/モニター展示/日本/2009年/約10分)
インターネット上に存在する他者の自己紹介映像の人物が話している表情や身振を作家本人が模倣したセルフポートレイト映像集。作家の自己紹介のように見えながらも、声やそれが語る言葉は他者のものであり、一切の関係性はない。模倣した映像はウェブ上にある専用のポータルサイトでの視聴を前提としており、サイト内にあるリンクをたどることで元の映像と見比べることもできる。このサイトはTumblrの「リブログ」という機能を生かし、多くのユーザーにも広がっていく。

受賞者のコメント

このような素晴らしい賞に選んで頂き、大変うれしく思っています。1年以上、WEB上での映像表現を試行錯誤してきましたが、この作品は自分なりに見つけた1つの着地点だと思います。それでも、何だかよくわからないものができてしまった、という完成直後の印象は今でも残っています。その点については今後も自問し続けていくことで、次の制作につなげていきたいと考えています。そしてヨコハマ国際映像祭を通じて、たくさんの方にこの作品を見て頂けることを願っています。この度は本当にありがとうございました。

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優秀賞

…niland 1

受賞作家

ロシオ・ロドリゲス、マリウス・レネヴェイト

(上映作品/エクスペリメンタル/スペイン/2009年/13分11秒)
水と大気の境界を引くことに焦点がおかれ、水と水中の渦、僅かな水位の上昇でフレームから狭められる空、水面の輝きで海の新たなランドスケープがつくられる。その不安定な映像は、人が事象を想像し、探求を続け、流動的で有り続ける存在であることを暗喩する。

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優秀賞

HAND SOAP

受賞作家

大山慶

(上映作品/アニメーション/日本/2008年/15分)
デジタルカメラでクローズアップ撮影した皮膚、木目、コンクリートなどの写真をデジタル加工し、一枚一枚の動画を描いて制作されたアニメーション。過剰な質感、グロテスクで生々しい独特のリアリティを生み出し、思春期という時間そのものを表現している。

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優秀賞

HACHIOJI: HOLE IN GAP- the crossing of zebra crossing

受賞作家

津田道子、キャロライン・バーナード

(上映作品/エクスペリメンタル/日本・フランス/2008年/12分35秒)
常に交差点に向けられているウェブカムの映像は、ネットワークを介してほぼリアルタイムでフランスにてキャプチャされており、それと同時にビデオカメラによって交差点の撮影がされている。1つの出来事を2つの異なる時間軸で編集したビデオ作品。

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審査員特別賞

The Sound of eBay

受賞作家

UBERMORGEN.COM

(展示・上映作品/インスタレーション/オーストリア・スイス・アメリカ・ドイツ/2008年)
インターネット・オークション「eBay」ユーザーの個人データを本作品のウェブサイトに入力することで、自動的にオリジナルの音楽を生成するシステム。

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審査員特別賞

ダブルテイク

受賞作家

ヨハン・グリモンプレ

(上映作品/ベルギー・ドイツ・オランダ/2009年/80分)
映画とTV、ヒッチコックとそのソックリさん等、「Double(分身、映像、替え玉)」の間に生じる複雑で深淵な関係を膨大な映像の引用によって描く。

1次審査結果報告

一次審査員


宇川直宏(映像作家、グラフィックデザイナー、現代美術家、VJ、京都造形芸術大学教授)
千房けん輔(アーティスト、アートユニット「エキソニモ」メンバー)
土屋豊(映画監督、ビデオアクト主宰)

一次審査通過作品


国内上映作品:18作品
『卒業』太田信吾/『牛乳王子』内藤瑛亮/『WASH AWAY』竹内邦晶、増田悠/『PATTERNS』佐藤義尚/『風をとって』鈴木野々歩/『Fまたはもここpart3もしくは番外編』佐藤健人/『love mouse』ひだかしんさく/『蟻食の潜む街路』水本博之/『水平線に近づく為に』有吉達宏/『アニマルダンス』大川原亮/『狼疾の人ー或る小説家の話ー』折笠良/『SANLIBUTAN』ミヤセサチコ/『素人アワー』鈴木洋平/『葵祭三部作』高木正勝/『迷宮レストラン』今井春日/『HAND SOAP』大山慶/『HACHIOJI: HOLE IN GAP the crossing of zebra time』津田道子、キャロライン・バーナード/『あたたとわなし』津田道子

国内展示・その他の作品:9作品
『オウトマチック・ヒュルリンコ』¥1980: くろやなぎてっぺい&樋口貴英/『バッキュウム・ポールノ』¥1980: くろやなぎてっぺい&樋口貴英/『Urbanized Typeface: Shibuya 08-09』山口崇洋/『a circular structure for the internal observer』平川紀道/『communication/dialogue』林紀子/『VOICE-PORTRAIT 〜self-introduction〜』松島俊介/『だけなんなん 001-437』鈴木淳/『記憶全景』横田将士/『WUNDER KAMMER』田村友一郎

海外上映作品:9作品
『Double Take』ヨハン・グリモンプレ(ベルギー、ドイツ、オランダ)/『Buffer』マニュエル・サイズ(スペイン)/『Space Drawing』サイ・ファ・クァン(シンガポール)/『Rubik』クリスチャン・キローニ(イタリア)/『LETY』クリスティアーノ・ベルティ (イタリア)/『Life must go on』シャム・カーキ(香港)/『World Animations』ガイア・ペルシコ(イギリス)/『Wuwang de Tudi(Hopeless Land)』リウ・ウェイ(中国)/『…niland 1』マリウス・レネヴェイト、ロシオ・ロドリゲス (スペイン)

海外展示・その他の作品:5作品
『Limitations Permitted』マニュ・ルクシュ(イギリス)/『XYZ300 Experimental Motion Control on DSLR』ロベルト・バリエーロ (カナダ)/『The Sound of eBay』UBERMORGEN.COM(オーストリア、スイス、アメリカ、ドイツ)/『I made this. You play this. We are enemies』ジェイソン・ネルソン(オーストラリア)/『the use』クリス・マン(オーストラリア、アメリカ)

審査員総評
一次審査

宇川直宏

(映像作家、グラフィックデザイナー、現代美術家、VJ、京都造形芸術大学教授)

『ヨコハマ国際映像祭2009』に審査員として参加し、現代に於ける『映像』の本質が少しだけ垣間みれたような気がした。インスタレーションからドキュメンタリーまで....『映像』は時代と共に多様化し、国境を超えて世界の共通言語になっていたのだ!!!そう、今世紀に言葉は必要ない!!!『映像』こそが必要なのである!!!!『ヨコハマ国際映像祭2009』を体験すれば、そのことがわかる筈だ!!!


千房けん輔

(アーティスト、アートユニット「エキソニモ」メンバー)

この総評を書くまでに、ちょっと時間が経ってしまってるので、全作品が90%くらい圧縮されて、渾然一体となって僕の脳内に残ってて、いくつかのトピック的な部分だけがインデックスとして見えている。

そんな圧縮された記憶を解凍せずにそのまま眺めてみると、全作品の中で一番印象に残ったのは『迷宮レストラン(総監督:今井春日)』という高校生達の作品だ。たしかにあまりに完成度が高すぎる部分に、大人がやらせているのでは?と思える部分もあるけど、それにしても他の作品達と質が全然違っていた。 やはりこの種のコンペに応募される作品は、「作家性」「コンセプト」「表現」が前面に立ってくるものが多いけど、彼らのパフォーマンスは、その全てが彼女らの肉体にサンプリングされるための素材として存在しているようだった。「表現指向」に至りがちな自分たちにとっての痛烈な批判とも感じられて爽快だった。その他に思い出された作品としては『だけなんなん 001-437(制作・撮影・編集:鈴木淳)』がある。特に技巧が凝らされているわけでもない、日常スナップの連続する映像作品で、こういうコンペではトピックにかける分、不利な種類の作品だと思うけど、独特な映像センスの様なモノが感じられて、いまだに時々思い出してしまう。実はこのどちらも受賞は逃しているし、相反するものだけど、ナゼかその二つが思い出された。こんな事いうと身も蓋もないけど、コンペはあくまでコンペ。賞を取らない作品にも良いものは沢山ある。


土屋豊

(映画監督、ビデオアクト主宰)

「今、これだけ映像が溢れかえり、映像そのものが現実を形作っていると言ってもいいこの時代に、これ以上、私たちに見るべき映像が残されているのだろうか?」という問いを立てて、今回の審査に臨んだ。しかし、そんな問いは、ただのひねくれ根性か、あるいは、恥ずかしいギョーカイ人気取りのせいであることがわかって、ホッとした。今、目の前にある現実と真剣に対峙し、それと格闘している作品は、やはり、観ているこちらの現実も揺さぶってくる。そこに見たこともない新しさがあろうとなかろうと、そういう映像は現在の一歩先を行き、(観ている私の)未来に影響を与える。シャム・カーキの『活在當下(life must go on)』、太田信吾の『卒業』は、特に、そんな思いを強く感じさせてくれた。映画・アート業界で、「新しい商品」として認められるかどうかは知らないが、少なくとも、私は認める。おそらく、商品にはならないと思うけど、商品ばっかじゃ、さらに「現実」が遠のいていくだろう。

審査員総評
最終審査

浅井隆

(アップリンク社長・プロデューサー・webDICE編集長)

近日掲載予定


欧寧 [オウ・ニン]

(映像作家、アートディレクター、評論家)

近日掲載予定


四方幸子

(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]特別学芸員、東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授)

審査会は、かつてないほど広い範囲の表現を前に、異なるスタンスをもつ審査員が忌憚なく意見をぶつけあう場となった。その結果大賞に選ばれた『VOICE-PORTRAIT~self-introduction~』は、各ジャンルの映像コンペでは入賞しにくい境界領域的なものであり、そのこと自体がノンジャンルのこのコンペの大きな成果、そしてメッセージとなりえたように思う。

この作品は、面白いことに審査のプロセスの中でじょじょに浮上してきた。それは審査員が、多様な表現の只中で、新たな映像をめぐる問題系——答えはないものの——に直面し、格闘したことを物語っている。

各ジャンルにおける表現の成熟か、複数の映像を連結していくメディアの横断性か。方法論かコンテンツか。自覚的な批評性か、未分化ながら創造的なメディアの扱いか‥。交わされる意見は、現代の情報環境における作家性や作品のあり方にまで多岐に及んだ。

個人的には、作家性よりもシステム、コンセプトをベースにしたメディア横断的表現に期待して臨んだが、その中で今後のメディアや映像に新たな投げかけを行なう大賞作をはじめ、多くの優れた映像表現に出会うことができた。それを可能にしてくれた第一審査員、ともに時間を過ごした最終審査員とCREAMのチーム、そして応募してくれた皆さんに感謝している。


STUBBS, Mike[スタッブス・マイク]

(アーティスト、FACT [Foundation for Art and Creative Technology]ディレクター)

近日掲載


諏訪敦彦 審査委員長

(映画監督、東京造形大学学長)

映画祭でも現代美術展でもないノンジャンルの新しい映像祭のコンペティションという事で、分類不能の新しい映像表現との出会いを期待して審査に望んだ。

審査員も多彩な顔ぶれであったが、集まった作品の多様さをどのような基準で審査するのかについて、混迷する議論を繰り返さなければならなかった。しかしその困難は、同時に映像表現の新しい局面へのはじまりであったと感じる。

一次審査を通過した作品には『HAND SOAP』や、『...niland1』といった、個人の映像表現を高度に達成したものもあり高い評価を得たが、どのジャンルにも属さず、従来の映像表現の新しいあり方を問いかけるような、あるいは我々の太刀打ちできない未知の領域に踏み出すような作品は、少なかったと感じる。フィクション映画の領域から切り込んでくる作品が少なかったのも残念であった。そのような未知の表現に、審査に携わった我々自身が、追いついていたのかどうかも定かではないが、今回のコンペティションが,まだ見ぬ作家たちの未踏の領域への一歩を励ますものであることを願っている。


山村浩二

(アニメーション作家、国際アニメーションフィルム協会日本支部理事、東京藝術大学教授)

今回は、異分野の映像の専門家の方々とのディスカッションで、自分自身普段と違う脳の部分を刺激された。一次選考に残った作品は、それぞれ手法やバックグラウンド、ジャンルも全く違っていて、これほど幅広い作品を審査するのも初めての経験だった。欲を言えば国際コンペテシヨンとしてのクオリティーに達していないと感じる作品も多く、公募の広がりと質の向上については今後に期待をしたいと思う。けれど最終的に賞に選ばれた映像は、いずれも映像としての力をもった物ばかりだと思う。

2日間の審議のなか、議論は、作品の持つ批評力についてと、いままでの「作品」と呼ばれる構成では括りきれない幅を探していたと思う。映像は意識的にも無意識的にも世界の表情を捉える。世界への意味付け、もしくは無意味性の提示。そして意味性を通り越した生々しい映像表現を見たいという欲望に答えてくれる映像との出会いへの期待が、この審査を終えてますます募ってきた。